文献 : 聴力障害
ヘッドホン・イヤホンによる音楽聴取
Decrease of hearing acuity from use of portable headphones
Kawada T, Nippon Koshu Eisei Zasshi. 1990 Jan;37(1):39-43.
22~29歳の医学生155名におけるヘッドホンの使用と聴力との関連について調査を行った。聴力レベルを測定し、対象者をグループA14名、グループB16名(非直結あるいは携帯型ヘッドホン使用者)、コントロールの3つのグループに分類した。グループAとグループBのヘッドホンの過去および現在の使用頻度は、1週間に2回あるいはそれ以上であり、1回の使用における平均使用時間は30~120分であった。一元配置分散分析において、3つのグループの平均聴力に有意な差は認めなかった。コントロールグループの平均聴力を0dBに標準化した後、グループAおよびグループBの聴力レベルをオクターブ周波数帯ごとにプロットした。グループBの4000Hzの平均聴力は、コントロールよりも悪い傾向があった。さらに、グループBの15dB・25dB・30dB・それ以上の聴力低下を有している人数の割合は、コントロールよりも有意に大きかった。これらの結果は、若者の10%以上に携帯型ヘッドホンの使用による聴力障害の危険性があることを示している。
Interventions to reduce high-volume portable headsets: “turn down the sound”!
Ferrari JR, J Appl Behav Anal. 1991 Winter;24(4):695-704.
2つの研究において、携帯型ヘッドホンステレオからの騒音レベルを低減するための介入の効果を調査した。研究1では、7811名中、携帯型ヘッドホンを所有している567名の乗員について、共用エレベーターの中あるいはすぐ近くに貼った警告表示の効果を調査した。9日間のベースラインの測定において、観察者に聞こえるレベルでヘッドホンを使用している平均割合は85%であった。その後の6日間の警告表示期では、ヘッドホンの音が聞こえる割合は59%に低下し、2度目のベースライン相(5日間)では76%に増加した。研究2では、学生2(協力者)からの丁寧な依頼により音量を低下させる学生1(協力者)の影響を調査した。4069名中携帯型ヘッドホンを所有しているエレベーターの乗員は433名であった。4日間のベースライン測定では、観察者に音の聞こえる割合は85%であった。続いて、5日間の介入では、音の聞こえる割合は46%であった。2度目のベースライン相の4日間では77%であり、再介入相(9日間)では42%であった。この介入は、男性(29%)よりも女性(53%)に有意に効果的であった。
Secondary auditory risks from listening to portable digital compact disc players
Loth D, Bull Acad Natl Med. 1992 Nov;176(8):1245-52; discussion 1252-3. French.
近年、カセットプレーヤーに加えて、高性能の携帯型CDプレーヤーを使用するようになり、またダイナミックレンジが増加したことで、使用者の聴力のリスクが高まっている。本研究では、このハザードの評価を試みることを目的とする。CDプレーヤーの選定の後、任意の健聴者12名に安全規則に適合した音響レベルで2種類の音声(クラシックとハードロック)へのばく露を行った。ばく露直後、4kHzおよび6kHzで一過性閾値変動(TTS)が確認された。また、0.5kHzの聴覚閾値をコントロールとして測定した。4kHzおよび6kHzにおいて、TTSの平均値は5dB(標準偏差 3.1~5.9)であった。4kHzおよび6kHz間のTTSには統計学的有意差はなく、2つの音楽間にも有意差はなかった。高周波数帯の軽度の聴力低下を患う任意の被験者にも実験を行った。そのTTSは平均よりも高く、その回復は遅かったかもしれない(単調なものではなかった)。従って、このような事例においては特別な警告が推奨されるべきである。測定により、とても高い音響レベルでは、許容水準(Leq1hour 110dBA)を大きく超えた125~127dBAに達していることがわかった。このように、聴覚に対して大きなリスクがあり、おそらく短時間の大音量での使用によりそのリスクは増加する。さらに、高性能ヘッドホンは、8kHz以上の周波数帯でもTTSを引き起こす可能性があり、高周波数帯の聴力検査を実施することで評価できるかもしれない。
Risk of hearing loss caused by listening to music with head phones
Ising H, HNO. 1994 Dec;42(12):764-8. German.
特定の集団を代表しない10~19歳の681名の学生について、ヘッドホンを通じてカセットプレーヤーから再生される音楽の騒音レベルを測定した。すべての学生は、毎日音楽を聴くことに費やしている合計時間を質問票に記入した。学生は音量(自由音場の補正short-time Leq)を60~110dBの間で設定していた。12~16歳の群では、10%が110dBを選択していた。全体の約50%は音楽を聴く時間は1日あたり1時間以下であったが、10%以下の学生は4時間以上であった。1日あたり8時間のばく露時間における等価騒音レベルは、55%が66dBA未満、7%が95dBAより大きく、4%は105dBAより大きかった。ISO1999に基づいた聴力低下の推定では、全体の約10%は、5年後に4kHzで10dBの聴力低下が生じることが予測されている。この方法で音楽を聴き続けた場合、0.3%が25歳でコミュニケーションに大きな障害をきたすほど重症の聴力低下に進行すると予測されている。
Improving audiometric thresholds by changing the headphone position at the ear.
Flottorp G, Audiology. 1995 Sep-Oct;34(5):221-31.
250~300名の従業員における年1回の聴力測定・一過性閾値変動(TTS)測定・ばく露騒音調査からなる10年騒音プロジェクトには、ヘッドホンの位置を調整することにより聴力閾値が改善するという研究が含まれている。閾値測定は、125~8000Hzの11の周波数帯で行われ、聴力制御プログラム(hearing control program)において2708回の聴力検査、および、TTSプログラムにおいて551回の聴力検査が実施された。聴力制御プログラム群では870例(32%)、TTSプログラムでは248例(45%)においてイヤホンを動かした後に、3000Hz以上の周波数帯で新たに閾値を決定することになった。イヤホンの移動が示すことについては議論が行われている。6000Hzおよび8000Hzにおける5~40dBの閾値改善が、周波数とプログラム(聴力測定およびTTS測定)により全体の58~68%で認められた。標準的な閾値と診断の目的の重要性について議論されている。
Output levels of commercially available portable compact disc players and the potential risk to hearing.
Fligor BJ, Ear Hear. 2004 Dec;25(6):513-27.
【目的】市販の携帯用CDプレーヤーのヘッドホンから生じる音圧レベルを測定すること。理論的な騒音-量(dose)モデルに基づいた安全指針を聴覚医療サービス従事者に提供すること。
【研究デザイン】KEMER(Knowles Electronics Manikin for Acoustical Research)とパソコンを用いて、音量調節装置を経由した出力レベルを、標準信号(white noise)を流したヘッドホンから記録し、8つの異なるジャンルのサンプル音楽と比較した。異なるメーカーの多くの市販モデルについて調査した。ヘッドホンの型が出力レベルに影響するかを調べるために、いくつかの異なるタイプのヘッドホン(insert:挿入型、supra-aural:耳載せ型、vertical:垂直型、circumaural:耳覆い型)を使用した。
【結果】最大設定音量で測定した自由音場での等価音圧レベルは、91dBA~121dBAであった。出力レベルは、メーカー、ヘッドホンの型で異なったが、小さなヘッドホンほど、音量調整によって高い音圧レベルを有していた。特にあるメーカーの挿入型イヤホンは、CDプレーヤーを購入した際に同梱されているヘッドホンと比較して、出力レベルが7~9dB高かった。一部のヘッドホンとCDプレーヤーの組み合わせでは、最大音圧レベルが130dBを超えていた。
【結論】 測定された音圧レベルと労働者を保護するためにNIOSHが勧告している騒音-量モデルに基づけば、耳載せ型ヘッドホンを用いて70%の音量調節下で音楽を聴いた場合、概して1時間以内に最大許容騒音量に達する。この研究で使用した挿入型イヤホンのような出力レベルの高いヘッドホンを使用することは、最大安全音量を著明に低下させる。この影響は、あるメーカーから他のメーカーについて、予想できないものである。多くの消費者の聴力を保護すべきであるという勧告の適正なガイドラインには、60%の音量で耳載せ型ヘッドホンを使用する場合は、1日の使用時間を1時間かそれ以下に限定すべきである、という事項が含まれている。
Active noise reduction audiometry: a prospective analysis of a new approach to noise management in audiometric testing.
Bromwich MA, Laryngoscope. 2008 Jan;118(1):104-9.
【目的】ANRヘッドホン技術を用いて、低周域の環境騒音の影響を低減する新しい聴力検査方法を展開すること。
【デザイン】無響室内での予測検査により、ANRヘッドホンの物理的特性を評価する。通常の聴力検査とANRヘッドホンを使用した聴力検査を比較した、臨床的前向き交差研究を行う。
【方法】Circum-auralタイプのANRヘッドホンであるBOSE Aviation Xの能動的遮音特性および受動的遮音特性について、頭と胴体のある実験装置を使用して半無響室で検査した。次に37名の耳科(otology)の外来患者に対して、30dBあるいは40dBの音場で通常の聴力検査とANRヘッドホンを使用した聴力検査を実施した。
【結果】ANRヘッドホンの遮音値は、2000Hz以下の周波数では最大12dBに達した。通常の聴力検査では、40dBの狭周波数帯の環境騒音により、250Hzで24dBの純音閾値が低下した。ANRヘッドホンを使用した場合は、12dBの更なる遮音性能をもたらした。この実験における著明な改善の結果は、40dBの環境騒音でもみられた(P<0.001)。30dBの音場において、通常の聴力検査における閾値は、平均12dB低下した。ANRヘッドホンを使用した場合、この影響を明らかに低減し、著明な改善の結果を示した(P<0.01)。これらの結果は、完全な防音室で得られた結果と変わらなかった。
【結論】30dBの音場でも、ANRヘッドホンを使用した聴力検査では、二重壁の防音室で行われた聴力検査と同じ結果が出せる。ANRヘッドホンによる聴力検査は、軽度の低周波数域の聴力低下に対するスクリーニング検査の感度を改善させる。この技術は、学校・産業界・地域社会におけるスクリーニングについて、重要な適応をもっているかもしれない。
Young adults’ use and output level settings of personal music systems.
Torre P 3rd., Ear Hear. 2008 Oct;29(5):791-9.
【目的】若年成人における個人用音楽装置からの騒音ばく露への関心が高まっている。この研究の1つ目の目的は、十分な数の若年成人において個人用音楽装置の普及度や聴き方の傾向を評価することである。2つ目の目的は、4つの設定の中から彼らが盲目的に選択した音量について、外耳道の音圧レベルを測定することである。
【デザイン】1つ目の研究である個人用音楽装置の使用に関する調査は、サンディエゴ州立大学構内の様々な場所で1016人の学生を対象に行った。性別・年齢・民族性・人種・個人用音楽装置の使用習慣の有無について調査した。個人用音楽装置を使用していると回答した学生には、引き続き11のイエス・ノー式の質問に回答してもらった。質問項目は、使用しているイヤホンのタイプ、最も一般的な音楽環境、1日あたりの使用時間、音量の設定である。性差と民族・人種との関係は、質問により評価した。2つ目の研究では、32人の被験者の外耳道にプローブマイクロフォンを置き、被験者が個人用音楽装置について盲目的に設定したLow、medium or comfortable、loud、very loudの4つの段階における音圧レベルを測定した。
【結果】1つ目の研究では、90%以上の参加者が個人用音楽装置を使用していると回答していた。そのうちの50%以上は1~3時間程度使用していると回答しており、約90%がmediumあるいはloudで使用していることがわかった。男性は、女性と比較して長時間使用する傾向が顕著であり、very loudで使用している傾向があった。ヒスパニックやラテン系の学生は、それ以外の者と比較して長時間使用している傾向があったが統計学的には有意ではなかった。黒人やアフリカ系アメリカ人学生は、他の群と比較して個人用音楽装置を3~5時間あるいは5時間以上使用している傾向およびvery loudで使用している傾向が顕著であった。2つ目の研究において、Low、medium or comfortable、loud、very loudの音圧レベルは、それぞれ、62.0dB、71.6dB、87.7dB、97.8dBであった。男性は、女性よりも明らかにvery loudで使用する傾向が高かった。
【結論】本調査に参加した若年成人の大部分がイヤホンを使用して個人用音楽装置を使用していることがわかった。回答者のほとんどが、1日あたり1~3時間、mediumかloudで使用していた。プローブマイクロフォンによる測定の結果、回答された使用時間に対する音量設定の範囲では、聴力へのハザードにはならないかもしれない。しかし、個人用音楽装置の長時間の使用と他の騒音ばく露(例:娯楽や職業性のばく露)との組み合わせ、あるいは、それらの聴力への影響について、調査に対する疑問は残ったままである。
Music through earphones: an underestimated risk
Cassano E, Med Lav. 2008 Sep-Oct;99(5):362-5. Italian.
若者に使用されているデジタル音楽再生機器(mp3)から生じる騒音ばく露について調査した。これらの再生機器の100%・75%・50%の音量における放出音圧レベルについて調査することを目的とした。マネキンを用いて、一般的に使用されている9つの再生機器について、100%・75%・50%の放出音圧レベルにおけるLeqA、Lmax、LeqC、peak in Cを測定した。すべての再生機器において、100%の音量では100dBAを超えていることがわかった。その後、通信機器を1日あたり15分・30分・60分使用している若者に対して、イタリアの法律195/06で推奨されているLex8の評価を行った。最大の音量で15分間の日常的なばく露を受けている若者は、195/06で87dBに定められている職業性ばく露の制限値を超過していることがわかった。
高校生にみられた音楽聴取によると思われる高音障害型感音難聴症例.
小泉智,耳鼻咽喉科, 1981. 53(1): 27-32.
某高等学校で実施された聴力検査(1,104人)のうち、難聴の疑いのあるものとして判定された23人に対する精密聴力検査を行った。その結果、16人にC5-dipなど騒音性難聴の特徴に似た高音障害型感音難聴が認められた。原因は、ステレオなどによる音楽聴取、ヘッドホン、イヤホンの使用および音響刺激に対する受傷性の個体差が聴力障害発生の要因として推定された。
再び高校生にみられる高音障害型感音難聴について.
小泉智,耳鼻咽喉科, 1982. 54(6): 431-437.
長野県にある6校の高等学校(4,496人)で実施された聴力検査の結果、難聴の疑いありと選別された66人のうち、39人が耳鼻科を受診した。精密聴力検査の結果、29人(男性26人、女性3人)が原因不明の高音障害型感音難聴が認められた。そのうちC5-dipを有する症例は23人であった。原因は不明であるが、ヘッドホン、イヤホンの使用を含めた騒音環境と内耳の受傷性の個体差とが関係しているのではないかと推測された。
ヘッドホンによる高校生の音楽聴取音量について.
小泉智,耳鼻咽喉科, 1982. 54(7): 491-495.
原因不明の高音障害型難聴を有する高校生でヘッドホンを常用する12人、同一地区の高校生でヘッドホンを常用し聴力正常の37人、ヘッドホンを常用し聴力性状の成人8人の計57人を被験者として、ヘッドホンによる音楽の日常聴取音量およびMCL(most comfortable level)の測定を行った。日常聴取音量は、難聴群だけが平均88dB SPLであり、対照群との間に有意差が認められた。MCLにおいても、難聴群と対照群との間に有意差が認められた。
テレビのイヤホン聴取により一過性聴力障害をきたした1症例.
呉橋宜宗,耳鼻咽喉科展望, 1983. 26(2): 147-151.
39歳男、深夜放送終了後テレビから発生する雑音を連続聴取したため聴力低下したと思われる例。一過性の聴力低下で、約10日間で回復した。放送終了後にテレビから出る雑音の調査成績と併せ考察した。放送終了後のFM検波回路内から発生する雑音が放送時の音声レベルよりも大きく、一般環境騒音に比し、中音域の成分が多く聴力障害を起こしやすい周波数特性をもっていた。
ヘッドホンによる聴覚障害.
小泉智,医薬の門, 1983. 23(5): 108-112.
長野県の高校生を対象に実施した聴力検査の結果から、主として男性に無自覚性の高音障害型感音難聴がみられることを報告した。この聴力像は騒音性難聴とにており、高校入学後に初発したものが多かったため、ヘッドホン・イヤホン使用が原因と考えられた。騒音の許容値の決定には、いろいろな要素を考慮しなければならない。85ホン以上の騒音は難聴を起こす危険性があると推測される。
Effects of Listening to Music with Headphones on Hearing
–Especially under Noisy Conditions-
三宅晋司,産業医科大学雑誌, 1986. 8(4): 391-404.
札幌市内の4つの交通機関内(国鉄、地下鉄、路面電車、バス)および街頭と地下街を歩行中の騒音を録音し、これらを防音室内にて再生した。その中で聴力正常な女子大学生に音楽をヘッドホンにて聴取させ、聴取音圧(Most Comfortable Loudness)を測定した。被験者は7名であり、そのうち2名は3種類の音楽を各2曲ずつ、他の5名は各自が自由に選んだ2曲を聴取した。最も大きい聴取音圧の得られた騒音条件を選び、30分の音楽聴取を行い、2分後の一過性聴力低下(TTS)を測定した。さらに、聴取音圧との関連について検討した。聴取音圧は街頭騒音下で最も大きいことが示された。TTSでは20 dB近い値が一耳に認められ、騒音状況下でのヘッドホンの使用の危険性が示唆された。
高校生におけるヘッドホン難聴の調査.
三宅晋司, Audiology Japan, 1986. 29(3): 152-157.
札幌市の高校2年生1,625名を対象として、ヘッドホンの使用に関するアンケート調査を行い、その結果よりヘッドホン頻用者66名、非使用者65名、高校の健康診断にて発見された原因不明の難聴者15名の計146名について聴力検査を行った。アンケート結果より、オーディオ機器の所有率は98%で、そのうち約70%の者がヘッドホンを使用していた。聴力検査の結果から、dip型または高音障害型の感音難聴を示したのはヘッドホン頻用者1名、ヘッドホン非使用者1名、健康診断時聴力障害者3名の5名で、ヘッドホン頻用者と非使用者群に難聴の発現率の有意差はなかった。
ヘッドホンオーディオと難聴問題.
掃部義幸, 日本音響学会誌, 1986. 42(6): 477-479.
ヘッドホンによる音楽聴取レベルは使用するヘッドホンの種類、再生周波数特性、個人の趣味嗜好によって大きく変わってくる。男性3名、女性5名の聴取レベルを測定した。静かな部屋での聴取レベルは75~80dB(A)、max100 dB(A)であった。ヘッドホンの平均使用時間は、1~2時間となっており、この場合、90~95 dB(A)と考えられる。結果から、通常の使い方においてはほとんど難聴の問題は起こりにくいと考えられる。
開放型ヘッドホンによる音楽聴取後の一過性域値変動TTS2の実験.
大石雄一郎, Audiology Japan, 1986. 29(3): 164-170.
両耳開放型ヘッドホンで一定の音楽を4時間、カップラ内音圧108 dB (SPL)で聴取させたところ、19歳~23歳の青年20名中2名に、2000Hz~8000Hzに10~17 dBのTTS2が発生した。117 dB (SPL)を30歳代、40歳代、50歳代の各1名ずつに1時間聴取させた結果は、40歳代の1名で2000Hz~8000Hzの間で8 dB~16 dBのTTS2、 50歳代では8000Hzで40 dBの永久的聴力障害となった。
ヘッドホン使用による音楽聴取時間とTTS2(一時的聴力損失)との関連についての実験研究.
和田一人,学校保健研究, 1986. 28(7): 340-345.
オープンタイプのヘッドホンよりB.G.M.を30分、45分、60分、90分と負荷し、それぞれの負荷前後に聴力検査を実施した。すべての負荷時間において、4,000 Hzが最も大きなTTS2値を示した。ヘッドホン使用による音楽負荷時間が長くなるほど聴力低下する。左耳の聴力損失値と右耳の聴力損失値を比較した結果、左耳の聴力損失値の方が大きい傾向を示した。
強大音響による音楽聴取に関するアンケート調査.
戸田行雄,耳鼻咽喉科臨床, 1987(補冊9): 96-106.
大学生ならびに高校生を含めた約3000名を対象として、ヘッドホンの過度使用や、ディスコ、ロックコンサートによる急性感音性難聴発症の可能性に関する意識調査、日頃の音楽聴取の程度と自覚症状の有無についてのアンケート調査を実施した。音楽聴取と難聴発生についての認識度や啓蒙の度合では、大学生はヘッドホンについて、高校生はディスコ、コンサートに関して浸透していたが、男子学生とくに大学生の男子学生は啓蒙を無視している傾向が強かった。ヘッドホンでは音量が大きいほど自覚症状の出現率が高く、ディスコ、コンサートでは「行く頻度」と「自覚症状の出現」が相関を示し、また強大音響にばく露された時間の合計が多い程、自覚症状の出現率が高い傾向をみとめた。
中学生におけるヘッドホンによる音楽聴取と聴力障害.
戸田行雄,耳鼻と臨床, 1987. 33(6): 953-957.
中学生約800名中、ヘッドホン頻用者(ヘッドホンを週5時間以上、しかも周囲の音がほとんど聞こえない程度の音量にて聴取する人)は21名(男10名、女11名)で、その平均聴力レベルは4分法で6.8 dB、 6分法で6.2 dBであり、コントロール群との比較では有意差を認めなかった。ヘッドホン頻用者に対し、日頃の聴取音圧レベルの測定を2曲行ったところ、平均聴取音圧レベルはそれぞれ室内83、 85 dB(A)、電車内音負荷時では89、90 dB(A)であった。週5時間以上、1回の連続聴取時間1.2時間、平均使用年数1~5年、聴取音圧が室内で約85 dB(A)、電車内音で約90 dB(A)の中学生の聴力所見は異常を認めなかった。
強大音響にて音楽を聴取する人の聴力所見.
戸田行雄,耳鼻と臨床, 1987. 33(4): 675-678.
高校生約1400名に対して強大音響による音楽聴取と自覚症状の関係、永久的聴力損失の発生の関係の実態を把握するために調査を行った。強大音響にて音楽を聴取する程度が増すにつれて、自覚症状の出現を訴えるものが多くなるものの、過度の音楽聴取をする人に対する聴力検査では永久的聴力損失は検出できなかった。ヘッドホン頻用者は自覚症状の出現率が高かった。ロックコンサートへ行く頻度が高いほど自覚症状の出現率が高かった。強大音響による音楽聴取後、一時的な自覚症状がみられたことからTTSを繰り返している可能性があり、将来、永久的聴力損失が出現する危険性も十分に考えられた。
騒音環境下でのヘッドホン使用と聴覚影響.
三宅晋司,人間工学, 1987. 23(Suppl): 138-139.
騒音環境下でのヘッドホン使用による聴覚影響を調べるため聴取音圧を測定した。その結果、聴取音圧は個人差が大きいが、総じて街頭騒音下で最大である。音楽種類間の差はない、騒音の大きさ、うるささと聴取音圧の間に有意な相関は認められない。聴取音圧最大となった条件で音楽聴取後の一過性難聴の測定により、大きい聴力損失が認められる被験者があったなどが明らかになった。
騒音と学校保健管理の諸問題をめぐって.
斎藤和雄, 学校保健研究, 1989. 31(9): 422-429.
学校保健に係わる騒音問題は、(1)校舎・住居の立地条件に係わる自動車などによる街頭騒音、建設騒音、(2)学校内の喧騒音、校外からの環境騒音の伝播、(3)帰宅後や休暇中の家庭内騒音としてのラジオ、テレビ、(4)レジャー騒音としての楽器演奏、ディスコなどがある。これらの騒音が学校や家庭においての学習や睡眠に与える影響は重大なことであり、学校環境衛生の上で、その実態を把握し、適切な対策を講ずることは極めて重要である。また、ヘッドホンステレオ等の児童生徒の自らの騒音ばく露に関する正しい保健教育が必要である。
中学生におけるヘッドホン使用に関する調査研究.
松嶋紀子,大阪教育大学紀要 3 自然科学・応用科学, 1989. 38(2): 211-222.
中学生1371名を対象に、ヘッドホンの使用状況を調査し、一部に聴力検査を実施した。ヘッドホン使用者は約5割であった。使用後の自覚症状として、耳への圧迫感、耳なり、聞えにくいなどがあり、訴えは使用時間の長い者ほど高率であった。ヘッドホン頻用群と非使用群別の聴力検査では、全員正常範囲にあったが、頻用群の方にわずかに聴力低下の傾向の認められる者がいた。
入学時健康診断における聴力検査の意義.
青木彰彦,全国大学保健管理研究集会報告書, 1989. 26回(2): 72-75.
某大学新入生3427名に、問診票と聴力検査による難聴の有無の検査を行った。難聴が37名(1%)に認められた。ヘッドホンの使用および楽器演奏による音響外傷の疑いが要因としてあげられた。定期的な聴力検査と生活指導が必要である。
ヘッドホン使用と聴器障害 中・高校生における耳科疫学的検討.
古川勝朗, 岡山医学会雑誌, 1990. 102(1-2): 51-61.
中・高校生2217名を対象とし、ヘッドホン使用に関するアンケート調査を実施した。調査内容は、ヘッドホンなどの使用の有無、使用年数、週間使用回数、1日使用時間、ヘッドホンの種類別利用率、聴いている内容、耳の自覚症状、耳の有訴率、耳疾患既往歴などであった。ヘッドホン使用による聴力障害の可能性が示唆され、その使用頻度が聴力障害発症要因になりうる結果であった。
ヘッドホン使用による聴力レベルの低下について.
川田智之,日本公衆衛生雑誌, 1990. 37(1): 39-43.
大学生のヘッドホン使用状況と聴力レベルの関連性を検討した。コントロール、非携帯用ヘッドホン(閉鎖型)ステレオ使用者および携帯用ヘッドホン(解放型)ステレオ使用者の3群間の聴力レベルを比較したが、統計学的有意差はなかった。ヘッドホン使用者の聴力レベルの平均値を比較したところ、携帯用ヘッドホン使用者群の4,000 Hzでの聴力レベルは低い傾向を示した。聴力レベルが15, 25および30 dB以上の有所見者の出現割合は携帯用ヘッドホンステレオ使用者群のそれは有意に多かった。
特集: ヘッドホン 音楽聴取と難聴.
小野博, JAS J (Jpn Audio Soc), 1993. 33(12): 39-43.
最近の研究成果を紹介し、強大音圧による音楽聴取によって生じる難聴の発生や進行、その予防などについて述べた。最近では強大音圧による音楽聴取が若者の生活に深く入り込み定着していることを考えると、これらの音楽が原因で難聴が発生した場合、なるべく早く耳鼻科を受診すること、固定した感音性難聴は治らないことを十分に理解してもらう必要性がある。
携帯用ヘッドホンステレオ聴取の実態調査と聴力に対する影響.
青野正二,環境衛生工学研究, 1995. 9(3): 243-248.
100人の携帯用ヘッドホンステレオ聴取レベルを実態調査した。平均80.5dBA、1/3以上が85dBA以上であった。テスト周波数6kHzの音楽1時間ばく露実験では、80dBA以上で6dB程度のTTSが生じた。TTSと臨界帯域内音圧レベルとは高い相関を示し、1時間音楽聴取では6kHzで9%に0~4dB、2%に4~8dBのTTSが生じると予想した。
中高校生におけるヘッドホン難聴の存在について.
大石雄一郎,耳鼻咽喉科臨床, 1995(補冊79): 132-136.
中学校2校(1,680名)および高等学校1校(959名)に対し、ヘッドホン難聴の存在を検索したところ、高校生男子3名に難聴が強く疑われた。3名とも聴取音楽はロック音楽で、94~100dB (A)の音圧で一日2~4時間、3~5年聴取していた。これらの騒音ばく露の量は、TTS2の騒音負荷実験等からみても慢性音響外傷を発生させるに十分なものであった。
ヘッドホンステレオによる聴力への影響.
太田利彦,環境衛生工学研究, 1996. 10(3): 35-40.
ヘッドホンステレオの聴力に与える影響について、聴力損失(TTS)の観点から、ばく露実験による定量的な評価を行った。実際に音楽1時間ばく露実験を行い、TTSを測定した。1時間ばく露後、TTSと臨界帯域内音圧レベルの間には高い相関がみられた。既存の予測式を用いて2時間ばく露したときのTTSの予測を行った。これらの結果から、ヘッドホンステレオで音楽を聴く場合1時間と2時間のいずれも、TTSが生じる人は10%と予測した。
ヘッドホンステレオ聴取の実態調査とTTSからみた聴力への影響.
青野正二,日本音響学会誌, 1997. 53(6):440-447.
100人を対象に、ヘッドホンステレオをどの程度のレベルで聴いているかということについて実態調査を行った。その結果、聴取レベルの分布を求めたところ、平均値は80.5dBAであったが、全体の約3分の1は85dBA以上であり、更に8%の人は90dBA以上であった。20人の被験者に対し、いくつかの音楽を用いて1時間のばく露実験を行い、TTSを測定した。その結果、1、2時間聴取の場合、10%未満の人々に8dB未満のTTSが生じる可能性が示された。
TTSから見た娯楽関連音の聴力への影響に関する研究.
青野正二,環境衛生工学研究, 2000. 14(2): 30-36.
日常生活において趣味や娯楽活動に付随した環境音を対象とし、TTSの観点から聴力への影響を評価した。娯楽施設の音について、ばく露音の特性、ばく露実験及び予測計算を行った。ヘッドホンステレオの音について、聴取の実態調査を行い、ばく露レベルとTTSの関係を1時間聴取の場合及び2時間聴取の場合で比較し、聴力損失の検討をした。管弦楽器の音について、楽器の音の特性、ばく露実験及び予測計算を行った。
若者の難聴.
古川朋靖,市川銀一郎, Med Pract, 2001. 18(11): 1942-1943.
難聴は、小児、成人、高齢者、いかなる年代においても認められる。若者に発生する代表的な難聴として、音響性聴器障害と心因性難聴について概説した。前者には、ディスコ難聴(ロック難聴)、ヘッドホン難聴、スポーツによる難聴があるが、いずれも強大音に突発的に、もしくは持続的にばく露されることにより生じる。心因性難聴とは聴覚器に器質的な異常が認められないにも拘わらず難聴を訴えるものである。
長期間使用されたヘッドセットのヘッドホンの音響特性の変化と聴力障害との関係.
筒井隆夫, 産業保健人間工学研究, 2005. 7(増補): 59-60.
ヘッドセットを使用した電話サービス業務において、耳鳴りと聴力低下を起こした1事例を経験した。そこで、ヘッドセットを長期間使用した場合、どの程度ヘッドセットのヘッドホンの音響特性が変化するか測定し、聴力障害との関係やヘッドセットの交換条件を検討した。ヘッドホンで会話を聞き取るには、1,000Hz以下の周波数特性が重要と考えられる。廃棄されたヘッドセットは、この周波数域の特性が低下しており、会話が聞き取りづらくなっていたものと推察される。ヘッドセットの交換時期は、周波数分析器で測定すれば確実だが、外見上損傷しているヘッドセットも周波数特性が低下している可能性があり、交換時期と判断してよいと思われる。
薬物・音響による聴覚障害のメカニズムと臨床 急性音響外傷 ヘッドフォンによる急性音響外傷.
加我君孝, JOHNS, 2006. 22(7): 967-971.
急性音響性聴器障害であるロック難聴は、何度も聴いているうちに、突然難聴が生じることが多い。飲酒、不眠、過労が引き金となりやすい。どのような機種でもヘッドホン難聴を生じる可能性がある。音響外傷になった場合は、耳を休め、ステロイド、ビタミン剤、血行代謝改善薬などで、できるだけ早く治療する。多くは改善するが、後遺症が残ることもある。